医療法人との違いと設立メリットを歯科医院向けに解説

歯科医院の経営が安定し、利益が出始めると
「節税のために法人化したほうがいいのでは?」
というアドバイスを受ける機会が増えてきます。
その際によく比較されるのが、
「医療法人」と「MS法人(メディカル・サービス法人)」です。
しかし実際には、
MS法人の役割や医療法人との使い分けを正しく理解している院長先生は多くありません。
この記事では、
500件以上の歯科経営支援実績をもとに、
- MS法人とは何か
- 医療法人との違い
- 設立によって得られるメリット
- 注意すべきポイント
をわかりやすく解説します。
MS法人(メディカル・サービス法人)とは?
MS法人とは、一言でいうと
**「医療行為を行わず、歯科医院の経営や周辺業務を担う法人」**です。
医療法人が「診療行為」を行う法人であるのに対し、
MS法人は以下のような非医療分野を担当します。
MS法人の主な業務例
- 受付・人材管理・広報業務の請負
- 歯科材料や備品の販売(物販)
- 医療機器のリース、建物・設備の管理
- IT導入支援、会計・経営管理のサポート
MS法人は、
株式会社・合同会社・一般社団法人などの一般的な法人形態で設立できるため、
医療法による厳しい制限を受けず、自由度の高い運営が可能です。
医療法人とMS法人の決定的な違い
医療法人とMS法人の最大の違いは、
「適用される法律」と「業務の自由度」です。
医療法人とMS法人の比較
- 医療法人
- 医療法に基づく法人
- 診療報酬を扱う医療行為が可能
- 業務制限が厳しい
- 設立に都道府県の認可が必要(4〜8か月)
- MS法人
- 税法・会社法など一般法に基づく法人
- 医療行為は行えない
- ビジネスとしての自由度が高い
- 設立期間は比較的短い(1〜2か月)
また、将来の出口戦略にも大きな違いがあります。
- 医療法人(持分なし):解散時の財産は国等に帰属
- MS法人:M&A、配当、自由な解散が可能
MS法人を設立する5つのメリット
MS法人を「節税目的」ではなく、
経営の仕組みとして正しく設計・活用することで、
次のようなメリットが期待できます。
① 家族・後継者への柔軟な報酬設計
医療法人では制限の多い
配偶者や子への報酬支払いも、
MS法人の役員報酬として柔軟に設計できます。
→ 世帯全体での所得分散が可能
② 医療法人では経費化しにくい支出への対応
- 車両関連費
- 住居費用
- 教育費 など
医療法人では認められにくい支出も、
MS法人を通じて適切に経費化できる可能性があります。
③ 資産と収益の分散によるリスク対策
利益や資産をMS法人側で保有することで、
- 訴訟リスクへの備え
- 将来の資産形成
といったリスク分散・資産防衛につながります。
④ 株式会社形態による「出口」の確保
MS法人を株式会社で設立すれば、
- 事業売却(M&A)
- 配当
- 投資の受け入れ
など、将来の選択肢が大きく広がります。
⑤ 人材活用の柔軟性
スタッフをMS法人所属とし、
医療法人へ出向・委託させることで、
- 柔軟な人事配置
- 社会保険料の最適化
を検討できるケースもあります。
MS法人に向いている医院チェックリスト
以下に当てはまる項目が多いほど、
MS法人の活用メリットは高くなります。
- □ すでに医療法人を運営している
- □ 子どもが医療業界以外に進む可能性がある
- □ 建物・土地などの個人資産を保有している
- □ 将来、大きな設備投資を予定している
- □ 相続税の負担が気になっている
- □ 所有と経営を分離したい
注意|「節税だけ」を目的にしたMS法人設立の罠
最も多い失敗が、
目先の節税だけを目的にMS法人を設立してしまうことです。
- 税理士や知人の助言だけで設立
- 実態のない「空洞法人」になる
- 結果、キャッシュが大きく流出
というケースも、実際に数多く見られます。
QGMが考える法人設計の3原則
- 減らす:税金・社会保険料を最適化
- 増やす:院長・家族の手取りを最大化
- 守る:資産防衛・相続対策を中長期で設計
法人設立はゴールではなく、
運用と検証のスタートです。
まとめ|MS法人は「設計次第」で価値が決まる
MS法人は、医療法人と組み合わせて正しく設計することで、
生涯可処分所得の最大化を目指せる強力な仕組みになります。
- 本当にMS法人が必要なのか
- 今のMS法人は機能しているのか
少しでも不安がある場合は、
表面的な節税情報に振り回される前に、
歯科経営に特化した専門家へ相談することが重要です。
医療法人・MS法人の設立や考え方については、
以下のページで詳しく解説しています。
▶︎ 医療法人・MS法人設立についてはこちら
【こちらの記事もご覧ください】
▶︎ 医療法人・MS法人は「作ること」より「設立後の設計」が重要な理由
▶︎ MS法人は節税のためだけに作ると失敗する理由