― 歯科医院でよくある失敗と正しい設計とは ―
はじめに
「税理士に勧められてMS法人を作ったけれど、正直うまく活用できていない」

歯科医院の院長先生から、このようなご相談をいただくことは少なくありません。
- 節税になると聞いて作った
- 設立まではスムーズだった
- でもその後、どう使えばいいかわからない
こうしたケースには、ある共通点があります。
それは、
“会計事務所主導で作られたMS法人”であることです。
もちろん、すべての会計事務所が悪いわけではありません。
しかし実務の現場では、
「作っただけで機能していないMS法人」の多くが、
設計の段階でつまずいています。
この記事では、
- なぜ会計事務所が作ったMS法人は機能しにくいのか
- 歯科医院で実際に起きている失敗パターン
- 本来あるべきMS法人の考え方
を、歯科経営の視点から解説します。
MS法人が「機能していない」とはどういう状態か?
まず、「機能していないMS法人」とは何かを整理します。
よくある状態は以下です。
- なんとなく法人はあるが役割が曖昧
- お金の移動だけが目的になっている
- 将来の承継や資産設計につながっていない
- 院長自身が仕組みを理解していない
つまり、
“存在しているだけの法人”
になってしまっている状態です。
なぜ会計事務所が作ったMS法人は機能しないのか
ここが本題です。
① 目的が「節税」になっている
最も多い理由がこれです。
会計事務所は税務のプロです。
そのため提案の軸がどうしても、
「税金をどう減らすか」になりがちです。
しかしMS法人は本来、
- 経営設計
- 資産設計
- 承継設計
のための仕組みです。
節税だけを目的にすると、
- スキームだけ作る
- 活用の設計がない
という状態になります。
② 医院全体の経営設計が考慮されていない
MS法人は、
単体で考えるものではありません。
- 医療法人(または個人事業)
- MS法人
- 個人
この3つを一体で設計する必要があります。
しかし会計事務所の提案では、
- MS法人単体のスキーム
- 税務上の処理
に偏ることが多く、
“全体最適”が抜け落ちているケースがあります。
③ 役割分担が曖昧
MS法人が機能するかどうかは、
役割設計がすべてです。
例えば、
- 不動産はどこが持つのか
- 人材はどこで雇うのか
- 利益はどこに残すのか
これが曖昧だと、
MS法人はただの箱になります。
④ 将来設計(出口戦略)がない
MS法人の本当の価値は、将来にあります。
- 事業承継
- 相続
- 資産移転
ここまで見据えて設計する必要があります。
しかし、
「今の節税だけ」で設計されたMS法人は、
将来の選択肢を狭めてしまうことがあります。
⑤ 設立後の運用サポートがない
これも非常に重要です。
MS法人は、作ってからが本番です。
- 取引設計
- 報酬設計
- 利益コントロール
など、継続的な見直しが必要です。
しかし多くの場合、
設立後は「あとは顧問契約の範囲内で」となり、
積極的な活用支援が行われません。
歯科医院で実際に多い失敗パターン
現場でよく見る具体例です。
ケース①:とりあえず作っただけ
- 税理士に勧められて設立
- 特に役割は決めていない
- なんとなく取引している
→ 結果:意味のない法人に
ケース②:節税はできたが不自由になった
- 一時的に税金は減った
- しかし資金の動きが複雑に
- 将来の自由度が下がる
→ 結果:使いづらい仕組みに
ケース③:承継に使えない
- 将来を考えずに設計
- 株式や資産の整理ができていない
→ 結果:承継時に問題が発生
正しく機能するMS法人の考え方
ではどうすればよいのか。
重要なのはシンプルです。
「目的」から逆算して設計する
MS法人は、
何のために作るのかがすべてです。
- 承継のため
- 資産形成のため
- 経営の安定のため
目的によって設計は変わります。
「全体最適」で考える
- 医療法人
- MS法人
- 個人
この3つを一体で設計すること。
「5年後・10年後」で考える
短期ではなく、中長期でどうなるか
を基準にすることが重要です。
まとめ
会計事務所が作ったMS法人が機能しない理由は、
税務中心で設計されているからです。
MS法人は、
- 節税のための道具ではなく
- 経営設計の一部
です。
同じMS法人でも、
- 設計されている医院
- ただ作っただけの医院
では、
10年後に大きな差が生まれます。
歯科医院のMS法人を正しく理解したい方へ
MS法人について、
- 医療法人との違い
- 失敗事例
- 正しい設計
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