
個人事業主として歯科クリニックを経営していると、
ある程度売上や利益が安定したタイミングで、こんな悩みが出てきます。
- このまま個人のままで良いのだろうか
- 医療法人にした方が節税になるのでは?
- MS法人という選択肢も聞くけれど、正直よくわからない
「医療法人」と「MS法人」、どちらが正解なのか。
実はこの問いに、万人共通の答えはありません。
大切なのは、
今の状況と、これからの将来像に合っているかどうかです。
まず押さえたい前提|医療法人とMS法人は役割が違う
医療法人とMS法人は、
そもそも目的と役割が異なる法人です。
医療法人とは
- 診療行為を行うための法人
- 診療報酬を直接受け取る
- 医療法の制限を受ける
- 承継・出口に一定の制約がある
MS法人とは
- 医療行為は行わない
- 経営支援・管理・資産管理を担う法人
- 株式会社など一般法人で設立可能
- 自由度が高く、設計の幅が広い
つまり、
どちらが良いかではなく、どう組み合わせるか
という視点が重要になります。
個人事業主が「医療法人」を検討すべきケース
次のような場合は、
医療法人化を優先的に検討する価値があります。
- 売上・利益が安定し、規模拡大を考えている
- スタッフ数が増え、組織化が必要になっている
- 分院展開や長期経営を見据えている
- 個人事業の税率が高くなっている
医療法人化は、
「経営を安定させ、医院を事業として育てる」
という意味で大きなメリットがあります。
ただし一方で、
- 設立・運営の手間
- 制度上の制約
- 解散・承継時の制限
もあるため、
作るタイミングと目的の整理が不可欠です。
個人事業主が「MS法人」を検討すべきケース
一方で、
個人事業主の段階でもMS法人が有効に機能するケースがあります。
例えば、
- すぐに医療法人化する予定はない
- 将来の資産形成・相続を見据えたい
- 不動産や設備を個人で保有している
- 家族を含めた所得・資産設計を考えたい
このような場合、
MS法人を先に設立し、経営の土台を整える
という選択肢もあります。
MS法人は、
- 経営と医療を分けて考えられる
- 将来の医療法人化にもつなげやすい
- 個人事業の延長として柔軟に設計できる
という特徴があります。
「どちらか一択」で考えると失敗しやすい理由
よくある失敗が、
- 医療法人か
- MS法人か
を二者択一で考えてしまうことです。
実際には、
- 個人事業 → MS法人 → 医療法人
- 個人事業+MS法人 → 医療法人+MS法人
といったように、
段階的・組み合わせ型の設計が可能です。
重要なのは、
今だけでなく、
5年後・10年後を見据えて設計されているか
という点です。
判断のカギは「税金」ではなく「設計」
医療法人やMS法人を検討する際、
どうしても「節税」という言葉が先行しがちです。
しかし、実務の現場で多く見てきたのは、
- 節税だけを目的に法人を作った
- 結果、使いにくくなった
- 後から修正がきかない
というケースです。
法人選択で本当に大切なのは、
- お金がどこに残るのか
- 将来どう引き継ぐのか
- 誰のための法人なのか
という設計の視点です。
まとめ|個人事業主こそ「順番」と「設計」が重要
- 医療法人とMS法人は役割が違う
- どちらが良いかではなく、順番と組み合わせが重要
- 将来像に合わない法人選択は後悔につながる
個人事業主のクリニックにとって、
最初の法人設計は、その後の10年を左右する重要な選択です。
「今の自分にはどれが合っているのか」
「このまま進んで問題ないのか」
そう感じたときは、
制度論ではなく経営全体を見た視点で考えることが大切です。
MS法人や医療法人の設立については、
こちらのページで詳しく解説しています。
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