ポータブルスキルとは、どんな環境でも活かすことができる(持ち運び可能な)スキルのことで、特定の業種や職種、環境に左右されない汎用性の高いスキルのことを言います。
当然、歯科医師免許を所持されている先生方は歯科医師としての知識・技術などをお持ちで、それはどこに行っても環境が変わっても先生方に備わっている財産です。
しかしながら、資格や免許にはならないビジネススキルがあります。
これはビジネス基礎力とも言われ、例えば論理的思考力やプレゼンスキル、コミュニケーション能力や問題解決能力、表現力や交渉力など、ビジネス教本に出てくるような単語ばかりです。
同じ歯科医師の資格を持った先生方にも、個人の性格の違いや、得手不得手があると思います。
例えば、コミュニケーション能力をお持ちの先生は、患者さんやスタッフさんとの会話に苦労はしないと思いますが、話すのが苦手な先生もいると思います。
同じ資格を持った他の歯科医師の先生との差別化を図るには、ご自分が武器として活かせるポータブルスキルを意識することが大切です。人と話すのが苦手でも聞き上手な先生だっているはずです。(患者さんは治療中は話せませんが)
私がポータブルスキルを語る際には、ある人の経歴を紹介することにしています。
参議院議員の橋本 聖子(はしもと せいこ)さんです。
橋本聖子さんは日本の政治家ですが、スピードスケートと自転車で夏と冬のオリンピックに出場し、アルベールビル大会では、スピードスケート女子1500mで銅メダルに輝いたメダリストです。
その後は政治家となり多岐に活躍され、東京オリパラの担当大臣をされたのは記憶に新しいと思います。
橋本聖子さんのポータブルスキルとして注目したいのは、氷上に限定されたスケートの技術ではなく大腿筋に代表される下半身の強靱な筋力で、長時間にわたって深い前傾姿勢を取りつつトラック競技を行うスピード感覚やバランスを保つ体幹です。
スピードスケートと自転車とは強靱な脚力というポータブルスキルが共通し、実際に夏季トレーニングとして自転車を採用していました。
美大出身だから画家かイラストレーター、デザイン関連の会社に…などと考える必要はありません。
学生のキャリア担当をしていたある日、就職相談に来たイラスト専攻の女子学生は、物静かで声も小さく人前で話したりプレゼンが大の苦手でした。
当然面接も緊張しハキハキとは話せないので、就職は絶望的だと思い悩んでいました。
私は彼女に言いました。
『何も心配することはない。君は立派なポータブルスキルを持っている』
私は彼女の強みは『聞き上手』だと伝えました。
穏やかな性格もやさしい言葉遣いも、時々うなずきながら相手の話を包み込むように聞く姿勢も、彼女独自の立派なスキルであり、同じグループの仲間達も彼女といるとついつい喋ってしまうという話を聞いた事があったからです。
卒業後、彼女は生命保険会社に就職し、訪問販売で高齢のお客様から高い人気で成約率もトップ。
持ち前のイラストのスキルを活かして成約いただいたお客様には、似顔絵を描いたお礼のハガキを送っていたそうです。
何年か後には部門責任者になって「先生! パンフレットのデザインも任されました!」と芸術祭の時に私に報告に来てくれました。面接嫌いのもの静かなあの学生が、ハキハキと話す明るいビジネスレディになっていたのです。
これを読んでくださる先生も、ご自分のポータブルスキルを最大限に活用していただきたいと思います。
患者の立場から思うことですが、歯科医院を選ぶ際のポイントは、施設や最新の設備と同じくらいに先生やスタッフさん達のお人柄がとても重要です。
ポータブルスキルは、その人が持つユニークな特徴です。
笑顔ひとつとっても他の人とは異なる魅力(例えば一瞬で安心させてくれる等)があれば、ポータブルスキルとしてどんどん発揮していただきたいと思います。
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クオリアマーケティング株式会社
ブランディングアドバイザー 下尾邦之
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