美術大学卒業後に大手家電メーカーのデザイン部署に所属になってから40年以上もデザインに関わってきました。入社から10年は調理家電や照明器具のような商品のデザインと、会社のロゴやブランドに関わるVCI(Visual Corporate Identity)デザインを担当しました。
その後は、デザインマーケティングとして米国NYCに駐在し、当時のデザイン指向であったエコデザインとホームオフィスの調査研究をしました。そして帰国後は、経営トップ直下の経営戦略組織に異動し、経営TOPの考えを「見える化」する仕組みとそれを事業化するためのデザイン開発を担当しました。2001年、会社のシンボルとして企画推進した岐阜のソーラーアークのデザインを担当できたことは、私にとってとても名誉なことでした。
これまで40年以上も関わってきたデザインですが、その内容は多種多様で一言では語り切れません。しかしながら40年間思い続けているのは、『デザインとは、もの・こと・しくみ等の課題や問題を《美意識》で解決する創作活動』だということです。
ここで言う《美意識》とは、単に視覚的な審美性だけではなく、そのデザインの背景にある見えない質や価値、効率や効果、モラルや思考までも含めた《美しさ》です。どんなに使い難くても売れれば良い、壊れたら新品を買ってもらえば良い、通販だから写真が映えれば良い等というのは私は美しいとは思えません。つまり私のデザインの定義は、デザイナー各々の《美意識》に因って左右されるということになります。
毎年の新入社員を指導していると、次第に大学におけるデザイン教育への意識が高まり、入社25年目に「もの・ことづくり」の現場を退職し、芸術大学のプロダクトデザインコースの教授として「ひとづくり」の現場に就きました。
もののカタチには意味があるのと同様に、あらゆるデザインにはデザイナーの意志が宿っています。デザイナーは、限られた条件の中で最大限の《美意識》を提供することが職責です。造形的な美しさや使い易さ等は《美意識》の約束事として後から付いてくることをプロは知っています。
この考え方はデザイナーに限らず、どんな職種にも言えるような気がします。特にプロである方は皆がプライドがあり、ご自身の《美意識》を仕事を通してカタチにしているのだと思います。
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クオリアグローバルマネジメント株式会社
ブランディングアドバイザー/二級知的財産管理技能士
下尾邦之