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「物を売ろうとしないでください」

投稿日:2023年12月26日 更新日:

大学を卒業後、関西の大手家電メーカーに入社しました。
商品をデザインするデザイナーの職種で入社したのですが、新入社員の導入訓練リストの中に量販店に出向し1週間販売体験をするというタスクがありました。

「何ごとも勉強だから」と上司に背中を押されて向かったのは大型家電量販店の洗濯機売り場でした。私は商品知識が乏しかったので売場にある全社の機種と特徴を覚えるのに大変でしたが、とても魅力的でした。
と言うのも、各社の洗濯機担当デザイナーの戦場なので、各社のデザインを見ながら、自分の会社のレベルを査定したりと身勝手にも楽しかった思い出です。

洗濯機売場の責任者の朝礼の言葉です。
その時は何を言っているのか理解できませんでしたが、今となれば身を以て実感した言葉として40年以上も私の中に残っています。

最初のお客様は、お子様連れのお母様でした。
大学入学を機に独り暮らしをする息子さんと家電の《まとめ買い》に来たそうです。
私が研修生という事は社外秘ですので、現場のプロの販売員として必死でした。
販売のノウハウはありませんが、少しだけデザインの知識を利用しながらご案内しました。
使う人の年齢層やライフスタイルによって商品の開発コンセプトが異なる事を簡単にご説明し、結果的に納得のいくお買い物をして頂けました。

帰られた後しばらくすると、その親子がまた来ました。
「お忘れ物ですか?」と尋ねると、

私には持ち場の洗濯機だけで限界なのですが、一応責任者に相談したところ「どうぞどうぞ!」という感じでした。
確かに研修で来た若造が少し持ち場を離れたところで、大きな損害にはならないと践んだのでしょう。

私は大学生活は独り暮らしでしたので、その親子と経験話をしながら2〜3フロアーを同行しました。各売り場の責任者には既に連絡が入っていて、全てがスムーズに終了しました。量販店のチームワークの凄さを実感したものです。
最後のお支払をされた後に、お母様からご丁寧なお礼の言葉を頂きました。
持ち場に戻り責任者に報告すると、

と言われた時、朝礼の言葉が蘇って「はっ」としました。

これまで、歯科医院に通う我々は、痛さの解決や虫歯の治療を買っていたのだと思います。
歯科医院にとっての「売るもの」が処置や治療であるならば、その「もの」を売らずに何を売れば良いのか、考えてみました。
おそらく、あの親子が私から買ったくれたのは商品よりも私と選んだ「安心」だったのかも知れません。なので、虫歯予防や健口指向の歯科医院から買うのは「安心」なのでしょうね。
歯医者さんに痛い・恐いのマイナスのイメージは全く無い時代になったような気がします。

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クオリアグローバルマネジメント株式会社
ブランディングアドバイザー
下尾邦之

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