2026年7月14日、NICO矯正歯科様(愛知県刈谷市・野村隆之院長)で実施してきた全5回のスタッフ研修プログラムが、最終回を迎えました。
最終回のテーマは「これからを語る」。スタッフ一人ひとりが、NICOという組織の中で自分がどんな役割を担っていくのかを、自分の言葉で仲間の前で語る──全5回の集大成となる回です。
この記事では、最終回の様子と、プログラム全体の設計思想をレポートします。

なぜ、理念は浸透しないのか
多くの組織で、理念はいわば「額に飾られた言葉」で止まってしまいがちです。
これは経営者である院長の熱意が足りないからでも、スタッフの意識が低いからでもありません。
原因は、理念の伝え方が「一方通行」になる構造がどうしても生じるからです。
朝礼で唱和する、研修で講師が解説する──どちらも、スタッフにとって理念は「聞かされるもの」のままです。聞かされた言葉は、現場や日々の仕事の判断には使われにくいのです。
理念が現場や組織で機能する条件は3つあると考えています。
共通目標・共通言語・共通感情。
同じ方向を見て、同じ言葉で語り、同じ場面で心が動く。
この3つが揃ってはじめて、理念は「自分ごと」になります。
そして、この3つは講義や日々の仕事の延長では醸成されません。
スタッフ自身が考え、語り、仲間の言葉を聞く場──つまり「共同学習」の場でしか作れまないと考えています。今回のプログラムは、この考え方を土台に設計しました。
プログラムの全体像──「本」から始めて「語り」で終える
NICO矯正歯科様との取り組みは、研修の前段階から始まっています。
まず、野村院長へのインタビューを重ね、開業の原点から、「Let's have fun 」という理念の誕生背景、これから目指す未来までを一冊にまとめた組織理念ブック「ナラルーツBook」を制作しました。院長の語り口をそのまま残した、いわば「NICOの原典」です。
研修は、この本を教材(テキスト)として設計しました。講師が作った借り物の教材ではなく、院長自身の言葉を読み、それについてスタッフ同士が語り合う。全5回・各回約3時間、講義ではなく共同学習形式です。
各回の間には「インターバルミッション」を設定しました。本の該当章を読む、学んだことを現場で1つ試す──研修と現場を往復させることで、学びを「その場限り」にしない仕掛けです。
全5回の流れ
| 回 | テーマ | 中心となる問い |
| 第1回 | 私とNICO | あなたはなぜNICOを選んだのか? |
| 第2回 | NICOの原点を知る | 患者さんが置いてきぼりになる瞬間とは? |
| 第3回 | 患者さんファースト | 自分の仕事をもっと楽しくできることは何か? |
| 第4回 | 楽しさと責任 | 先輩たちが当たり前にやっていて、自分がまだできていないことは? |
| 第5回 | これからを語る | 1年後の自分に、どんなNICOの一員でいてほしいか? |
順番には意味があります。まず自分の価値観から入り(第1回)、組織の原点と理念を知り(第2〜3回)、行動レベルに落とし(第4回)、最後に未来を自分の言葉で語る(第5回)。「聞く」から「語る」へ、段階的に主体を移していく設計です。
最終回レポート──いちばん難しいのは「自分を語ること」
最終回の中心は、スタッフ一人ひとりによるプレゼンテーションです。テーマは「NICOのこれからと、その中での自分の役割」。
実は、これが全5回でいちばん難しい課題です。人前で自分を語ろうとすると、多くの人は「よそいき」の言葉を使ってしまいます。それは立派に聞こえるかもしれない、でも本人の実感が乗っていない言葉。よそいきの言葉だけでは、聞き手の心を動かしません。
そこで最終回では、プレゼンの前に「語りの型」をお伝えました。
- Why→What→How──何をやるかの前に、なぜやるのかから語る
- 現在→過去→未来──今の自分、ここに至った経緯、これから目指す姿の順で組み立てる
この型に沿って個人で準備した後、グループ内で1人5分のプレゼンと相互フィードバックを行いました。
時間が足りないくらいにみなさんが積極的にプレゼンを披露。楽しそうに話されるスタッフのみなさんを、野村院長がうれしそうに眺めている姿が印象的でした。
当日は、スタッフの皆さんが非常に主体的に参加してくださいました。原稿を読み上げるのではなく、自分の経験を、自分の言葉で語る。仲間の発表に対しても、形式的な拍手ではなく、具体的なフィードバックが自然に飛び交う。第1回で作った「安心して話せる場」のグラウンドルールが、5回を通じて文化として定着していることを実感する光景でした。
プログラムの締めくくりは「バトンを受け取る」。ナラルーツBookの「おわりに」にある院長の言葉を全員で読み、理念を言葉で終わらせず行動で表すこと、半年後にこの本を読み返すことを約束して、全5回を終えました。
私たちが設計で大切にしたこと
今回のプログラムで一貫させたことが3つあります。
第一に、教材は経営者自身の言葉で作ること。 汎用的な研修教材では、理念は他人事のままです。院長のインタビューから作った本を教材にしたことで、スタッフは「うちの院長はこう考えてきたのか」という発見から学びを始めることができました。
第二に、講義ではなく共同学習にすること。 全5回のなかで講師が「正解を教える」、そんな時間は一切ありません。問いをお伝えし、スタッフが考え、語り合う。
当事者意識は、当事者として関与した経験からしか生まれないからです。
正解がない問いに、自分が考え、仲間と話し、正解を生み出す。
組織の正しさは組織ごとに違います。共同学習で自分の組織の「正しさ」を生み出すように設計しました。
第三に、「自分の言葉」にこだわること。 理念を暗唱できることと、理念で判断・行動できることはまったくの別物。
だからプログラムの最終ゴールを「理念や前提となる大事な考え方を自分の言葉で語れること」に置きました。
文化を作った、その次へ
理念の浸透は、それ自体がゴールではありません。スタッフが理念を自分の言葉で語れるようになった組織は、評価や育成といった「制度」を、押しつけではなく文化の延長として受け入れられる状態になっています。
柔らかい土台(文化)を先に作り、その上に硬い構造(制度)を載せる──私たちが組織づくりで一貫している順序です。
クオリアグローバルマネジメントでは、経営理念の言語化から、浸透研修、その先の組織設計まで、一貫してご支援しています。「理念はあるが、現場に届いていない」と感じている経営者の方は、お気軽にご相談ください。