今年の2月に中部日本デンタルショーに視察に行きましたが、プロダクトデザイナー魂が覚醒されてしまいました。
と言うのは、リクライニングチェアのデザインをしていた時になかなか良いアイデアが生まれず【くつろぐ】という動詞のデザインをするという考え方でデザインを原点から考え直しましたが、その頃の記憶が鮮明に蘇ってしまったのです。
ユニットにおける椅子の部分は、一体どんな動詞をデザインしているのか?
という答えを探していたのかも知れません。
ユニットは医師側と患者側双方からの声が反映されたカタチだと思いますが、プロダクトデザイナーの視点で見るとメーカー各社間の熾烈なデザイン闘争を感じました。
特許庁サイトによると、現時点(2024年4月)で歯科用治療台として《特許・実用新案権》が28件、《意匠権》は60件登録されています。
家電デザインの経験からすると意外に少ないのが印象的でしたが、恐らく求められる機能や人間工学的な制約が多く、新たなデザイン展開が困難なアイテムなのだろうと思います。
カタチを少しだけ変える《チョロ替え》では、プロでも簡単には思いつかないカタチという《創作非容易性》が認められず意匠権は取れません。
展示会場では無意識のうちにプロダクトデザイナーとして徘徊していた私は、チェアの裏側を覗いたり脚部をコンコンと指で叩いたり、座面のシートを何度も触っては説明員の方に素材や表面処理を尋ねたりと、周囲の人とは全く異なる行動の不思議な来場者でした。
それにしても、ユニットにおけるデザインのテーマである《動詞》について、メーカーのデザイナーさんに聞いてみたいと思います。
歯医者の先生にしてみれば《患者の頭が動かず口の中がよく見えて安全に支障なく治療できる》デザインであり、患者にとっては《座り心地が良く緊張しないでリラックスする》デザインではないでしょうか?
患者側の私にとっては、《緊張で背中に汗をかいても脚を突っ張っても先生にバレない》デザインが有り難いですね。
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ブランディングアドバイザー
下尾邦之